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点検評価と課題 分子研リポート2004 | 分子科学研究所

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4.点検評価と課題

4-1 分子制御レーザー開発研究センター

分子科学研究所「分子制御レーザー開発研究センター」に関する外部評価報告書

財団法人 豊田理化学研究所 岡田  正 独立行政法人 理化学研究所 緑川 克美

日程

平成16年11月30日(火) 10:00-12:20

あらかじめ送付された研究成果の概要などに関する資料に基づいて,猿倉助教授および平等助教授からの説明と質 疑応答

13:00-14:30

松本センター長から資料に基づいてセンターの現状と将来計画について説明があった後,中村分子科学研究所長, 猿倉,平等両助教授が参加して自由な意見交換

14:30-15:40

猿倉,平等両研究グループの研究室見学

4-1-1 分子制御レーザー開発研究センターの役割と成果について

分子制御レーザー開発研究センターは,新しい分子科学研究を切り開くための高性能かつ新規なレーザーシステム を自ら開発し,先端的分子科学研究の推進に寄与することを目指して平成9年度にスタートした。現在センターには, 1)分子位相制御レーザー開発研究部,2)放射光同期レーザー開発研究部,3)特殊波長レーザー開発研究部の3 部門があり,レーザー開発研究を精力的に進めると共に,多数の共同利用機器を保有,維持管理し,利用者の便に供 している。

先ず,センターにおける研究面について述べる。

レーザー開発研究に関しては,猿倉助教授のテラヘルツ光源や紫外固体レーザーの開発および平等助教授によるマ イクロチップレーザーとその波長可変技術の開発等,顕著な成果をあげていると判断される。テラヘルツ電磁波を光 源とする新しい分光研究が分子科学研究者との共同研究で進められていることや手のひらサイズの小型大出力のレー ザーの民間への技術移転など,限られた人数で当初の目的を果たす大きな成果を挙げているといえる。

センターに設置されている3つの研究開発部は分子科学研究を支え推進するに相応しい体制であると考えられるが, 分子位相制御レーザー開発研究部における佐藤助教授の早期の転出と放射光同期レーザーに関する研究計画の発展的 変更という事態により開発が頓挫している。この点については,分子科学研究所における積極的な人事交流の重要性 と急速に発展している分子科学領域の現状を考慮すると致し方ない面がある。特に,放射光同期レーザーに関しては, UV S OR の今後の計画とも関連すると思われる重要な課題であり,十分な検討が必要であろう。

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4-1-2 将来計画について

分子科学における広い意味での光科学研究の新しい展開の拠点としての新センターを設置し,「光を創る,光で観る, 光で制御する」という3つの重点目標のもとに,今後の重点課題としあげられた以下の3課題を推進することを強く 支持したい。

1)テラヘルツから真空紫外にいたる新たなコヒーレント光源の開発 2)光イメージングとナノ領域顕微分光法の開発

3)光位相の精密制御による物質波のマニピュレーション

新たな光分子科学を推進するにあたっては,先端的光源や未踏の波長領域の光源を開発することは,新しい計測法 や方法論の開拓とともに不可欠である。レーザー開発が先端的になればなるほどその開発に期間を要することを考慮 すると,新センターと分子科学研究者,特に,分子科学研究所の研究者との連携が重要になる。このためには,セン ター長の役割が以前にも増して一層重要になると考えられるため,この点に関する十分な検討と配慮が必要である。

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4-2 分子スケールナノサイエンスセンター

評価委員会(外部委員によるヒアリング)開催日:平成16年12月13日及び15日 所外委員 岩澤 康裕 (東京大学,教授)

大嶌幸一郎 (京都大学,教授) 川合 真紀 (東京大学,教授) 関  一彦 (名古屋大学,教授) 所内委員 魚住 泰広 (分子研,教授)

小川 琢治 (分子研,教授) 松本 吉泰 (分子研,教授) オブザーバー 中村 宏樹 (分子研,所長)

ナノセンターの研究グループを二つに分け,松本,佃,夛田,田中彰治の4グループは13日に岩澤委員,川合委員 によるヒアリングを受け,魚住,小川,永田,鈴木,櫻井の5グループは15日に大嶌委員,関委員によるヒアリング を受けた。それぞれの日に,委員と中村所長を交えて,センター全体に対する評価を受けた。

4-2-1 所外委員の意見書

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員 A 概要:

本センターは,平成14年に,諸研究系,分子物質開発研究センター,錯体化学実験施設などを先行組織とする改組 により,「分子金属素子・分子エレクトロニクス」「ナノ触媒・生命分子素子」「ナノ光計測」の3研究部門と「先導分子 科学」の流動研究部門として発足し,3年目の途中での評価である。従って,人事的には従来組織からの継続が多い が,幾人かの新規採用や転出予定によって構成が変化し始めたところであると言えよう。

構成員の研究レベルは高く,評価資料によれば,今回私が面接を担当した5グループ(永田・櫻井・魚住・鈴木・小川 グループ)構成員は,2003,2004年度に原著論文23篇,総説・解説14篇を内外の一流研究誌に発表している他,特許 を6件申請し,国際会議招待講演10件,国内招待講演15件を行っている。これらには前任地での業績も含まれるが,こ れらのメンバーが活発な研究活動を行っている証と言えるであろう。

より具体的に各研究グループの独自の研究活動に言及する。

小川教授のグループでは,分子スケールにおける電子物性測定の確立を目指して,物質合成から物性測定までの多 彩な局面にわたって,優れた独自のアイデアで着実に研究を進展させている。この分野に係わる国内外の多くの研究 者とのネットワークも構築しており,日本のリーダーとしての活躍を期待する。

魚住教授のグループは,豊富な外部資金や人員をもとに,水中での多種の不斉反応の実現など,環境調和性の高い ナノ触媒を系統的に開発し,優れた成果を挙げている。魚住・永田・櫻井・佃グループが共同して開発しつつある金 属微粒子触媒の成果も興味深い。

永田助教授のグループは生体系を規範とする光合成物質変換システムの開発を目指して,デンドリマーとフェロセ ン・キノン類を結合した大型有機分子を巧みに合成し,その光誘起電子移動などの機能を評価しており,関連系を用い た触媒的酸化還元反応の開発も視野に入れている。高度な合成技術を活かし,良いアイデアにより,「新しい系」から

「新しい機能」を実現し,この分野での激しい競争の中で一歩抜け出されることを期待する。

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鈴木助教授のグループでは,パーフッ素化炭化水素や含窒素化合物など,有機 E L 素子,有機電界効果トランジスタ 等の有機電子デバイス用材料の開発を進めている。実デバイスに用いたときにかなりの高性能を実現している材料も あり,今後の展開に期待したい。

櫻井助教授は着任後間がないが,このグループでは,C60などのフラーレン類の部分構造を有する,スマネンなどの バッキーボウル分子の新規で効率的な合成法を開発し,蛍光材料などへの展開も図っている。物理化学的測定により,さ らに深い展開が図れそうな点も多く見受けられ,所内外の他分野研究者との交流による今後の研究成果が期待される。

施設面では,分子研等の三研究所が従来展開していた明大寺地区からやや離れた山手地区に新築された山手3号館, 4号館,5号館を用いて空間的には比較的余裕のある展開が行えている。中でも 920MHz 核磁気共鳴装置は,独立に 5号館を用いるという恵まれた環境にある。

また,分子研は京都大学,九州大学とともに,文部科学省のナノテクノロジー総合支援プロジェクトの一環をにな う分子・物質総合合成・解析センターに認定され,本センターはその中心として通常の共同利用の他に「分子電子素 子のための,素子作成と電気特性計測システム」などを用いた共同利用(協力研究)を受付けている。例えば平成16 年度後期には17件を本センター教員が担当している。とくに平成17年度から共同利用に供される 920MHz 核磁気共鳴

(NMR )装置は国内最高水準を誇る装置であり,このクラスの装置の全国共同利用は分子研のみで行われている。さら に平成17年度後期から固体高分解能測定を可能にする準備が進んでおり,この装置の価値を高めようとしている。高 度な装置の効率的利用のため,予備測定システムの整備などが望まれよう。

分子研内外における本センターの位置づけと将来への展望:

センターのミッションは,センター規則によれば「原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明と制御,新 しい機能を備えたナノ構造体の開発及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新 しい科学を展開するとともに,ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある物性機器,研究設備の集中管理を行い,こ れらを研究所内外の研究者の利用に供し緊密な連携協力の下で共同研究等を推進すること」となっている。このうち, 原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明や制御は,従来の化学や物理の分野でも日常的に行われているこ とであり,近年のナノサイエンス・ナノテクノロジーの高まりの多くの部分は,従来の化学・物理の研究分野を超えた, 新しい機能を備えたナノ構造体を念頭においた科学の展開,およびその体系化への努力によるものと考えて良いであ ろう。本センターでの研究・人事などにおいても,この点に特に留意した運営が望まれる。さらに,その中で,同様 の方向を目指している国内外の諸研究拠点に対し,分子研としての独自性・先導性をどう見出していくかがセンター 発展のキーとなるであろう。

分子スケールでの電気伝導測定や有機デバイスの評価は,この中で衆目の一致する研究主題の一つであり,小川教 授,夛田助教授のコンビが優れた独自の視点に立った研究を押し進めて来た。今後もこの方向は重要であり,合成化 学者とのセンター内連携,分子集団研究系(薬師,小林グループ),極端紫外光科学研究系(宇理須・小杉グループ)な どとの所内での効果的連携(例えば有機伝導体を用いたナノスケール素子の開発など)を含めて強力に推進されるこ とを望みたい。ナノスケールでの測定は有機伝導体などのバルク測定とは異なる独自の技術を要するものであり,今 回これまでセンターの活動の中心の一人であった夛田助教授が転出されるのに際し,後任ポストの確保,および優れ た後任者の選定が本センターの活動の次のキーポイントになると思われる。この分野は世界的にも競争が激しく,グ ループのスケールが勝負の分かれ目になるところがあるので,折角の優れた研究の方向が十分に活きる陣容を整えら れることが望まれる。これに対し,ナノスケール分子触媒の開発や,ナノ光計測は,分子研独自のものに発展する可

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能性を持っている。既成分野との差異をいかにして打ち出し,ナノサイエンスに本質的寄与を行えるかが次の課題で あろう。また,合成関連分野においては,大学の合成グループが多くのメンバーのもとに多様な研究活動を行ってい るのにそのまま競合するのは有利でないように思われる。焦点をある程度絞り,できれば他分野研究者と互いに真剣 に相手分野に入り込んでの共同研究を行うといった活動により,関連分野に本質的貢献を行い,存在感を示すことが できると思われる。

流動研究部門は,現在は従来の組織から引き継がれたメンバーが多いようであり,また制度的な変化はあり得ると 思われる。本センターのイニシアチブのもとに客員などの形で実質的に継続することができるのであれば,有効に用 いることで上記のような方向付けを効果的に行うのに役立つであろう。

また,この種のサイエンスでは,新しい解析装置・ナノファブリケーション装置などの装置開発が先端を押し進め る有力な手段となる。この点,分子研は強力な装置開発室を有しており,独自の研究手法の開発に有利な立場にある。 今後の人事において,この種の装置開発指向の人材の獲得も視野に入れておくのが有効ではないかと思われる。

ナノサイエンスは,優れて学際的要素の強い学問分野であり,物質合成,新しい構造体の作成,その構造・機能の 解明,といった諸要素が緊密にからんで進むものと考えられる。従って,各グループの研究活動を活発にするほか,本 センター内での協力,研究所全体での協力,さらに所外との協力の全てを活発に行うことが望まれる。センター内で の協力は,このようなセンターを設置する重要な理由の一つであり,自らの分野での研究を進展させるだけでなく,互 いの分野に真剣に踏み込んでの刺激や協力が求められる。例えば金属ナノクラスターの触媒機能に関する研究がこの 成功例となることを期待する。また,このような点に対する組織的な取組として,センター内での研究交流会を行っ ておられるということであり,心強く思われる。

また,分子研においては,本センターの他,分子集団研究系を始めとする諸研究系・施設・研究センターが関連し た研究を行っているので,できるだけ緊密な研究体制を構築することが望まれる。この点では,山手地区と明大寺地 区とかなり離れた場所にいる双方のメンバーが,半定期的にでも研究交流を行う機会を組織的に設けることが有用で はないだろうか。

さらに,本センターには,国内の関連分野における拠点としての活動が求められよう。上記のナノ支援共同利用は この一環と考えられる。さらに,予算的に,また人的負担の面で可能であれば,関連分野の研究者を集めてのナノサ イエンス・テクノロジー研究集会(国内・国際)といったものを定期的に開催することも考えられる。例えば阪大産研で は,この種の研究集会シリーズを定期的に開催しておられる。このような会合で,分子研内部の関連研究者にも参加 を要請し,外部研究者も招いて,独自の視点にたった会議組織が行えれば,本センター独自の「ナノサイエンス」が 発信できるのではないだろうか。幸い分子研・岡崎コンファレンスセンターを含めて設備は恵まれているが,人的負 担が過重にならないように注意する必要があろう。すでに研究者個々人では種々の機会を用いてこのような活動を行っ ておられるのではないかと推測するが,センターとしての組織的取組もあって良いかと思われる。

いずれにせよ,本センターは分子研の将来や,日本のナノサイエンス・ナノテクノロジーにとって大切な方向を担っ ており,日本の分子科学が築いてきた高度な研究水準をナノスケールサイエンスに展開することにより,所内外に大 きな貢献をすることが期待される。

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(1)分子スケールナノサイエンスセンターでの分子研の役割,寄与と位置付け

本センターは,平成14年に発足以来,新しい機能を備えたナノ構造体の開発を行っている。さらに新しい科学を展

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開するとともに分子科学の研究に共通性の高い物性機器研究設備の集中管理を行い,研究所内外の利用者との共同研 究を推進してきている。まだ新しい組織であり本年4月から加わったグループもあり,新鮮で生き生きとした雰囲気 が感じられる。分子エレクトロニクスおよびナノ触媒の分野で重要な役割を演じていることは,本センターに属する 先生方の多くの論文,学会発表をみれば明らかである。ナノサイエンスの分野は政府が21世紀の日本の科学ならびに 産業の柱として推進しようとする重点分野のひとつであり,その中心拠点として本センターの役割は大きい。今後益々 その重要性は大きくなると考えられ飛躍的な発展が期待される。

(2)当該センターの国内,国外での研究分野としての重要度

21世紀はナノの時代であり,分子スケールナノサイエンスはまさに科学のフロンティアである。そのため,これに 現在関わっている研究者も多く,今後この分野に参入する研究者も国の内外を問わず増加するだろう。もちろん競争 は非常に激しくなる。その競争の中で先頭を走るのがこのセンターの役割であり,責任も重い。新規大型機器導入に 努力を払い,その設備を中心として共同研究を積極的に進めることで国内のこの分野をリードしてほしい。

(3)今後この分野の発展はあるか,どのような方向か

ナノサイエンスということばが使われるようになって少し時間が経過した。とにかくナノサイズのものを作ろうと いう時代から機能を念頭において原子・分子レベルでナノの構造体を設計していくというところに移ってきている。こ の方向は益々鮮明になり,光機能,電子機能,触媒機能などをもつ分子をターゲットとした研究が中心となるであろ う。

(4)分子研の当該センターが今後どのように進むべきか

ナノサイエンスセンターの研究教育職員は,様々な研究のバックグラウンドをもっておりこのバックグラウンドを もとにセンターの設置目的である「原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明と制御,新しい機能を備えた ナノ構造体の開発ならびにその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を 展開する」ために,各々が自由自在に発想し,研究を進めればよい。その中で共同研究がふさわしいものがあればこ れを進めればよい。無理に共同研究を考える必要はなく,あくまでも各々の個性を発揮してほしい。

センター発足以来2年数ヶ月の問に推進してこられた研究はいずれもすばらしいもので,これらをそのまま延長,展 開していかれることを望む。また新しいグループも加わり,互いに刺激しあいながらナノサイエンス上の課題に挑戦 することで,新しい共同研究の可能性も広がるだろう。

このセンターの設置目的のもう一つの柱である「ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある設備等の集中管理・共 同研究の推進」については,新規に導入された 920MHz NMR が広く,効率よく利用されるよう維持管理をお願いする とともに,この機器がとりもつセンター内外の共同研究が積極的に展開されることを望む。さらに新しい機器の導入 についても前向きな提案と財源の確保をお願いしたい。

(5)分子研の共同研究機関としての現状と将来への提言

全国の研究者から注目されているのが今年度導入された大型機器 920MHz 核磁気共鳴装置(NMR )である。理化学 研究所とあわせて全国で2台しかない装置であり,利用を望む研究者はかなり多数にのぼるであろう。さらに来年度 には固体サンプル用のプロ一ブも導入されると聞いている。液体サンプルの場合には前もって分子研ならびに他の研

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究機関に設置されている 500MHz あるいは 600MHz の NMR で予備測定を行うことで 920MHz のマシンタイムを節約す ることができる。これに対して固体サンプルが測定可能な 500MHz あるいは 600MHz NMR は日本中にほとんどない。 したがって固体サンプルを測定しようとすれば直接 920MHz NMR を使用することになる。そのためマシンタイムをか なり専有することになり効率が悪い。そこで固体サンプルの測定ができる 500MHz あるいは 600MHz の NMR を当該セ ンターに導入していただくことを要望する。X線がとれないサンプルであっても多くの情報を得ることができる固体 の NMR は,ナノサイエンスにとつて非常に大きな武器となる。さらに一般にオープンして使用する世界でも初めての 装置となる。その点からも一目も早い導入に努力していただきたい。

(6)分子研に対する建設的批判,提言

分子研の一番の問題は学生を含めてマンパワーをいかに集めるかという点である。立派な施設,設備に対してあま りにも研究員や学生の数が少なく,いかにももったいないという感じである。大学院生の授業料を免除し,かつ給与 も出しさらに学生寮を作って,その給与の中で充分生活できるような割安な生活環境を提供するようなことをしても よいと思う。

施設にだけお金をかけるのではなく,人材にもお金をかけ日本の研究のトップを集めることを考えてほしい。大学 とは全く違う発想で考えてほしい。学生を集めるというのをやめて研究員をすべて雇用する理化学研究所のような形 態に変えてはどうか。それも破格の高給を出してエリート集団を作るというのはどうだろうか。さきがけなどの特別 な研究費をもらっている若手をその年限を切って分子研に集めて研究してもらう。あるいは逆に分子研で研究するこ とを前提とする特別の研究予算を立てて募集してはどうだろうか。

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本センターは原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の開発及 びその電子物性の解明を行うと共に,それらの研究を効率的に推進するために物性機器,研究設備の集中管理を行い, 研究所内外の研究者との緊密な連携協力の下で共同研究を推進することにより,物理的・化学的ナノサイエンスを体 系化し新たな研究領域を開拓することが期待されている。

そのために各研究グループ毎の独自テーマの遂行に加えて,今年度からセンター内外での共同研究の推進にも取り 組んでおり,その努力に敬意を表する。この時問題となるのは,共同研究の萌芽を育てる原資をどう工面するか,新 たなテーマにどのように限られた人材を投入するかであろう。

また,共通的な種々の機器や設備をそろえ管理提供する場合には,全国共同利用とするに魅力的な設備が肝要であ ると思われる。その意味で,920 MHz の NMR は固体試料に威力を発揮する最先端機器としてセンターの目玉となると 期待される。マシーンタイムや対象試料の共同利用に対してどのような運営形態を取りうるのか効率性のしくみが重 要になるであろう。さらに,NMR 以外にもナノサイエンス推進には重要かつ必要な機器があると思われるが,実際, どのような財源を用いて何を導入するかの検討も行われており,ナノファブリケーション設備の導入も候補にあがる など,センター内外の研究者にとり益々本センターの魅力が増すであろう。

 今までの分子科学の枠組みと領域を超え,原子・分子レベルでのナノサイエンスを切り開き,また,新たな対象 物に対して積極的な展開を目指す分子スケールナノサイエンスセンターの発足は,極めて時宜を得た重要なセンター となるものと期待される。

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分子科学研究所は設立以来,世界的な拠点として「分子科学」をリードして来ており,現在も,また将来にわたっ て科学の世界でこの位置を保ち続けるであろう。分子科学研究所が世界をリードする研究所である背景には,新しい 科学を発信し続けてきたことがある。今回,評価委員会での説明を受け,分子科学研究所にとって,「ナノサイエンス センター」の設立がどういう意味を持っているのかを考えざるを得なかった。新しい科学の発信を目的としたものな のか,或いは,世の中の流れを取り入れた,研究所内の改組を目的としているものなのか,という疑問を感じた。組 織形態によってそこから生み出されるであろう科学を測ることは妥当とは思わないが,世間に充満している「ナノサ イエンス」に対して,分子科学研究所ならではのアプローチを期待するのは,行き過ぎであろうか。

ナノサイエンスセンターは「ナノサイエンス研究を行う」機能と,「ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある設 備等の集中管理・共同研究の推進」という機能を担うとされている。前者については,各グループが推進している個々 の研究は十分に高いレベルにあり,科学的な価値は疑う余地もない。(各グループの個別の成果については別途ふれる ことにする)発足間もない組織であることから,グループ間の共同作業の成果はまだあらわには見えてきていないが, 定期的に企画されている研究交流会を通じて新しい共同研究の芽が育ってくることに期待したい。後者については,ま だ整備段階にあるが,文部科学省のナノ支援プログラムにより導入されたNMR 装置が現在ほぼ整備を完了しつつあり, 本装置はナノセンターの中核設備として今後,ナノサイエンス研究の共同研究推進に寄与することが期待されている。 本装置により,あらたな化学領域がつくられるであろうことは想像に難くない。分子科学研究所がこれまでに果たし てきた役割を考えるとき,独自に開発してきた計測装置を基礎として,新しい科学分野に切り込んでいった歴史を忘 れてはいけない。特に,レーザー分光を中心とする計測技術のポテンシャルは,分子研の研究を特徴付けるものであ ろう。独自装置の開発には人と予算が必要であるが,現在のナノセンターの限られた人材のなかで,どこまで実行可 能であるのか,はなはだ疑問である。

なお,ナノ支援プロジェクトのミッションとナノサイエンスセンターが担う所内外との共同研究の立場がどういう 関係にあるのかはよく理解できなかった。

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4-3 極端紫外光研究施設(UV S O R )

平成16年度実施の極端紫外光研究施設(UV S OR 施設)の外部評価委員は以下の3名である。菅教授と柳下教授は高 度化前の平成12年度評価のメンバーでもある(「分子研リポート2000」を参照)。

菅 滋正 大阪大学教授 (固体分光 を中心に施設評価) 柳下 明 物質構造科学研究所教授 (気体分光 を中心に施設評価) 春日俊夫 物質構造科学研究所教授 (光源加速器を中心に施設評価)

事前に資料(過去の外部評価結果,それに対するこれまでの取組み,現状説明等)を各委員に送付した上で,平成16 年12月8日∼10日の3日間に委員1名ずつ評価のために来所していただいた。当日は,まず全体の評価方針について UV S OR 施設長(小杉信博)から説明した後,各委員が施設教授・助教授(加藤政博,繁政英治,木村真一)に対して 担当業務についてのヒアリングを実施するとともに,UV S OR 施設の現場視察を行い,評価結果をまとめていただいた。 公表用のレポート以外に所長宛,施設長宛それぞれに,国内の施設間連携,人事政策,研究系との関係などにも触れ たコンフィデンシャルなレポートを提出いただいた。さらに,平成17年2月2日に3評価委員,所長,小杉,加藤で 合同評価委員会を開催し,意見交換した。評価のまとめはすべて評価委員全員に報告し,それぞれ加筆修正を依頼し 全体の評価としてまとめるようにしている。以下は各委員の最終評価報告に基づき項目別に整理したものである。

外部評価結果については平成17年1月より UV S OR 施設のホームページに公開し,共同利用研究者からの意見を聴 取しながら施設運営に役立てているところである。また,平成17年2月4日の UV S OR 運営委員会でも運営委員間で 外部評価結果について意見交換を行った。

4-3-1 平成 12 年度の評価以降の取り組みについて

スクラップ&ビルドや更新の結果,ビームラインの姿が良く分かるようになった。競争力のあるビームラインをさ らに性能向上し,有力グループのビームタイムを通して成果を挙げることが期待できる。この4年間で利用者層の出 入りがあったことがうかがえた。毎年1,2グループの出入りがある現状は望ましい状況と考えられる。建設,更新 に協力してきたグループが結果的にビームタイムを採択されている現状は好ましい姿である。今後継続的な性能向上 を考えるとき,更新に協力的な有力グループを優遇する形があっても良いものと思われる。いたずらに高エネルギー 側への進出を図るよりUV S OR の特長を生かして低エネルギー分光に重点を置く戦略は妥当である。テラヘルツ光利用 研究や 40 eV 以下の光電子分光などで今後の競争力が期待できる。

光源系については,新たに教授ポストが置かれ業務委託も一名配置されたので,研究環境は著しく改善された。高 く評価する。測定器系についても,大胆なビームラインの再配置をし,6本のビームラインを廃棄した。施設の英断 に敬意を表する。施設ビームラインは9本(所内ライン B L 8B 2 の施設利用化後),ビームライン・スタッフは9名(来 年度の補充を含めて)なので,ビームライン・スタッフの研究環境は大幅に改善された。但し,現在,光源関連でし か業務委託(1名)が行われていないので,今後はビームライン関連にも1名配置すべきであろう。当面は所内運用 される予定のアンジュレータ・ビームライン B L 3U が高度化の際に建設された。ビームライン分光器の性能はほぼ設 計性能の満たすものであり,評価できる。本ビームラインでの研究計画も,世界レベルの研究成果を目指すものであ る。研究成果を期待している。

光源系職員数が着実に増えてきていることは高く評価できる。特に従来設けられていなかった教授ポストを獲得で

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きたことは,長期的視点で光源加速器の運転維持・将来計画立案に責任を持ってあたることが可能となったという点 で,全国共同利用施設にふさわしい体制が確立されつつあるという印象を受けるものである。また助教授と適切な役 割分担をすることにより,光源開発研究もより一層活発に行えることが期待できる。ただし,現在中堅の加速器研究 者の人材難も事実である。助教授ポストの柔軟な運用,あるいは若手加速器研究者の育成も必要であろう。技術職員 については,現在2名とのことであるが,光源加速器の運転維持管理のみならず冷却水設備などの保守管理,放射線 安全管理などの業務も遂行しているようであり,技術職員の増員もしくは業務委託の拡充が望まれる。

業務委託については,Photon F actory や S Pring-8 など,全国共同利用を推進している大型施設では大規模に導入して おり,UV S OR でも導入されるようになったことは大変に好ましい。現在は施設全体で1名ということであるが,予算 措置を継続することは言うまでもなく,今後更に人数を増やしていくことが強く望まれる。技術職員との役割分担に ついても他の大型施設の例を見ても全く問題のないことは明らかであり,むしろ技術職員の専門性の向上をもたらす ものであると考えられる。

高度化改造や光源開発について,少人数であるにもかかわらず,有意義なプロジェクトを活発に遂行してきたこと は光源グループのアクティビティの高さを示すものである。しかしながら一方では,少数精鋭主義は長期間にわたる 地道な研究を必要とする加速器の開発研究には必ずしも適していない面もある。また,限られた人数で加速器のすべ ての分野をカバーすることは困難であるので,他機関との共同研究が重要である。加速器研究部門の充実は,加速器 研究が主体とはいえない分子科学研究所でどのように折り合いをつけるかが課題であろう。また,加速器研究者が研 究活動に専念できる体制を構築することも必要である。

4-3-2 光源加速器関連設備について

①光源加速器

平成14年度予算で実現された高度化改造で,光源加速器の基本性能が格段に向上し,建設後20年が経過し老朽化の 懸念されていた加速器コンポーネントの多くが更新されたことは,非常に高く評価できる。2005年春に予定されてい る R F 空胴の更新は,同様な観点から重要である。高度化された加速器の性能をより活かすためにも,現在空いている 3箇所の直線部へ早急にアンジュレータを導入し,また,ビームラインを建設することが望まれる。

しかしながら,依然として一部には20年以上が経過している装置もあり,施設の安定な運転のためには,これら装 置類の改良や更新を今後も継続していくことが強く望まれる。多くの装置類は従来の保守・維持費用の範囲で更新を 継続していけるものと思われる。今後も従来どおりの予算措置を継続していくことが必要である。ただし,シンクロ トロン電磁石電源装置は大型であり,更新には特別の予算措置が必要と思われるが,建設後20年以上が経過し,重故 障の場合には長期の運転停止の可能性もあるので緊急性は高いと考えられる。現シンクロトロンのエネルギーは 600 MeV と,蓄積リングの運用エネルギー 750 MeVより低い。蓄積リングでの加速を避け,さらにトップアップを可能に するためにも 750 MeV 以上までエネルギーの増強を行うべきであろう。なお,現在の入射に要する時間は短いので,シ ンクロトロンの繰り返し周波数を下げて電磁石電源の電圧を抑えれば,出力電力を現在のまま,あるいは低減するこ とも可能であろう。

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②付帯設備

冷却水,空調,受電設備などの付帯設備も老朽化が進んでいるはずであり,今後も継続して保守管理を行い,必要 に応じて更新も行っていくべきである。これらの設備は設備課の管理下にあるが,加速器装置と一体のものと見做す べきである。重故障が発生した場合には施設の運営に大きな影響を与える可能性があり,また,これら付帯設備の性 能が光源性能に影響を与える可能性もある。光源グループと設備課は常に連絡を取り合い,設備の状況を把握し,性 能維持あるいは性能向上に努める必要がある。

UV S OR の建物は老朽化が進んでおり,大規模な改修はともかくも,必要に応じて適切に手を入れていくことが望ま れる。建物の外装,内装,エレベータ,トイレ,共同利用者控え室など,適切に改修を進め,全国共同利用施設とし て恥ずかしくないレベルを保っていくべきである。U V S ORよりも2年ほど建設の早い高エネルギー加速器研究機構 Photon F actory では,最近,建物の内装,付属設備などの改修が行われている。

職員数も増え,海外からの来訪研究員も多いと聞いているが,現在の建物で十分な数の居室や実験室を確保するの は難しいものと思われる。所内で適切な配置転換を行い,隣接する建物など,距離的に近いところに十分な数の居室, 実験室が確保されるべきである。

4-3-3 施設利用ラインについて

前回の評価の提言に従って大胆な更新が行われてきた。その成果を見るにはまだ時間不足の感があり,発表論文の 形になっているものは多くは無い。今後目に見える形での成果が続々出て来るものと期待している。あえて言えば更 新されたビームラインについてもさらに性能向上を行える要素が多々あるのでさらなる投資を行うことで一流の成果 を継続的にあげられるビームラインに発展できる可能性の芽がたくさんある。

B L 6B , B L 5U 以外の施設利用のビームラインについては,それなりの役割を果たしているし,それなりの研究成果も 出ているので,基本的には現状維持で良いであろう。但し,主に固体の軟X線分光に利用されている B L 1A(高い軟X 線領域)と B L 8B 1(中軟X線領域)の内,B L 8B 1 は今後の運営を考える時期になって来たのではなかろうか。

以下に個々のビームラインに関する評価結果を示す。

①赤外領域のビームライン

B L 6B  (赤外,遠赤外,テラヘルツ)

高度化が行われた赤外∼テラヘルツ領域のこのビームラインは世界最高強度のものであり出色である。施設の英断に 敬意を表したい。

低エネルギー 1 meV までカバーできる T Hz 分光は物性科学として広範な利用が期待できる。ハードウェアに強い施設 スタッフを擁しているのであるから,このビームラインでの飛躍的な研究発展を期待する。

UV S OR の特徴が活かされたビームラインである。成果も上がっている。研究内容レベルも高い。限られた分野ではあ

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るが,今のままで一流の成果が上げられるビームラインである。さらに手を加えれば,広い分野で一流の成果が上げ られるビームラインにもできる。そのため,もっと予算をつけ,もっと整備して増強すべき。グループあたり長いビー ムタイムを与えて一回分の実験で論文をまとめられるようにという方針は支持できる。マジックミラー導入で性能が 飛躍的に向上したので,今後は S Pring-8とは相補的な T Hz 領域に重点をシフトした研究を強力に推進すべきである。導 入されている装置の性能を最大限に発揮することでユニークな研究が多数出ることが期待できる(たとえば磁気光学 効果の変調測定など)。

②真空紫外領域のビームライン B L 1B  (固体瀬谷)

研究内容は普通だが,それなりの成果が上がっている。汎用ビームラインであるのでコンスタントに利用されている 現状で良い。その中で成果を上げるテーマが時々出てくるという形で良い。利用者の責任で実験を遂行する事が望ま れる。

B L 7B  (固体直入射)

それなりの成果が上がっている。利用度はこのままでよいであろう。維持にはあまり予算はいらないと思われ,現状 で成果が上げられるはず。基礎データをとるための汎用ビームラインとしての存在価値は大きいので装置の性能維持 については施設者側で責任を負う事が望まれる。ビームタイム中の支援は殆ど不要で,利用者の責任で実験を遂行す る事が望まれる。つまり十分なビームタイムを与えてユーザーが習熟できるレベルに早く到達する事が望ましい。

③真空紫外領域∼低軟X線領域のビームライン B L 5U (高分解能光電子)

成果は徐々に上がっているが,まだ発表論文の形のものは少ない。研究内容は高くなる可能性が大である。手を加え れば一流の成果が上げられるビームラインである。利用度が高く,もっと整備して増強すべき。主に光電子分光実験 に利用されている。このリングと光源と電子エネルギー分折器の組み合わせから期待できる成果は極めて大きい。し かし光分光器の性能がそれらに比べて見劣りする。低エネルギーでは光子数が少なく,高エネルギーではエネルギー 分解能が世界標準と比べると見劣りする。分光器の更新によって低エネルギー(< 100 eV )での光電子分光に威力を 発揮できるビームラインとして国際競争力を持つことが期待できる。

B L 5U でまだ実現されていないアンジュレータ・ギャップと分光器の波長駆動の同期スキャンは,早急に実現すべきで ある。エンドステーションの光電子分光実験装置は,良く整備されていて性能も世界レベルである。しかし,光分光 器の性能が悪いため,光電子スペクトルの分解能は世界レベルから大きく引き離されている。高度化されたエンドス テーションの実験装置の性能と高度化前のままのビームライン分光器の性能がミスマッチである。対応を早急に考え る必要がある。予算の関係でビームライン更新を早急に行うことが出来ない場合は,現在,1グループしか使ってい ない所内ビームライン B L 2B に移設して研究を展開することを検討すべきではなかろうか。

B L 5Uの光電子分光については分光器を現代の技術の先端を蓄積したものに更新することで国際競争力に富むビームラ インになることが確実である。現在は光電子分光汎用ビームラインとしてユーザーの拡大を図るフェーズと考えて良

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いが,さらに次のステップを平行して計画することが望まれる。つまり UV S OR -II と高輝度アンジュレータ,高性能分 光器,高性能光電子分光器の組み合わせで 100 eV 以下の領域で世界をリードできる研究が可能であり,これを UV S OR で推進する意義は大きい。 

④低∼中軟X線領域のビームライン B L 5B (PGM 斜入射分光器)

機器校正専用ビームラインとして,その役割を果たしている。放射光施設としてはこのようなサービスも重要な役割 である。利用率は 80% 以上あるので,このまま運営して行けば良い。成果も出ている。あまり予算はいらない。

⑤中軟X線領域のビームライン B L 8B 1(S GM 斜入射分光器)

気体専用のビームラインから,NE X A F S 専用に転換されたが,固体のユーザー数は限られていて,利用率が低い(50% 以下)。分光器の性能もかなり悪いので,将来的にはビームラインを更新して,新たな研究プロジェクトを展開する必 要がある。

⑥軟X線結晶分光領域のビームライン B L 1A (二結晶分光器)

X A F S が測定出来る標準的なビームラインである。研究内容は普通。利用率は 80% 以上であるので,利用度を無理に 上げる必要はない。予算をあまりかけずに,現状を維持していくだけで良いであろう。

⑦白色光利用のビームライン B L 8A

分光器が設置されていない,軟X線照射専用のビームラインである。利用率はあまり高くない(40 ∼ 70%)ようであ るが,成果は出ている。このようなビームラインを施設利用として使えるようにしておく必要度はある。あまり維持 に予算はいらないであろう。

4-3-4 光源開発研究について

蓄積リング自由電子レーザーについては,発振波長が光共振器用ミラーの性能によって制限されることから,可視・ 紫外域に限られており,通常型レーザーと競合するために,世界的にも研究は下火になってきている。今後この研究 をどのように展開していくべきか,見直すべき時期に来ていることは間違いない。UV S OR の自由電子レーザーは,加 速器の安定性が高く,また,ここ数年実用化へ向けた開発研究を進めた結果,極めて安定に高出力のレーザー発振が 実現できる状況にある。このため当面は,レーザー発振機構の基礎的な研究,あるいは,自由電子レーザーと放射光 の完全同期を活かした応用実験を継続しつつ,2年程度を目処に今後の研究の展開について方針を固めるのが適切で あると考えられる。外部レーザーを利用した光源開発は今後の展開のひとつの方向であり,今後更に検討を深めつつ 外部資金の獲得に努めるべきである。

テラヘルツ領域のコヒーレント放射光を我が国の蓄積リングで初めて検出に成功したことは極めて高く評価できる。

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UV S OR では世界に先駆けて赤外線領域の放射光利用を展開してきたことはよく知られており,現在も活発に赤外線利 用が行われていることから,実用化を意識しつつこの研究を継続するのが適当である。

以上は UV S OR 光源グループの世界に誇るべき研究成果である。今後とも,このような研究が活発に行われる環境

(研究費やマシンスタディ用のマシンタイム確保)を保つべきである。加速器は手段であり目的ではない。加速器研究 の成果は利用されてはじめて意味のあるものとなる。新しく開発された光源技術により得られた“ 光(電磁波)” の応 用のために,利用側とも密接に協力して研究を遂行すべきである。このために,外部資金の獲得に努力することも必 要であろう。また,外部の研究者との連携,博士研究員の獲得などにより研究体制を一層充実することが望ましい。

4-3-5 今後の強化策,将来計画について

①ビームライン利用研究

直入射領域の光電子分光ラインの強化(現 B L 7U のアンジュレータと主 R F 空胴の移設によって B L 7U を長直線部化 して,現B L 5U の成果を発展させる)とテラヘルツ顕微分光(B L 6B )のプロジェクト案の説明を受けた。両者ともUV S OR の特徴を生かしたプロジェクトであり,早急に進めるべきものと思う。但し,前者についてはどのようなアンジュレー タを選択するのか(例えば,長尺アンジュレータである必要はないのではないか),分光器のどのようなマウントを選 択するのか等,技術的検討が充分にはなされていない。これらの検討を早急に進める必要がある。UV S OR では,いま だかつて設計性能を満足する直入射分光器が建設されたことが無い。このことを重く受け止めていただきたい。最近, 世界レベルの斜入射分光器が B L 4B と B L 3U に建設され,性能を発揮している。必要に応じて他施設との連携を進め ながら,UV S OR のような小型リングが最も得意とするはずの真空紫外光(極端紫外光)領域で世界に誇れる直入射分 光器を建設してほしい。

以前は UV S OR の特徴になっていたはずのシングルバンチ運転の要求が,最近,あまりない事は,意外であった。現 在,いろいろな反応の実時間観測は,放射光の分野でも主流になりつつある。UV S OR でもシングルバンチ運転の積極 的な利用を検討した方が良い。ただし,小型施設であるがゆえにシングルバンチと言えどもパルス間隔が 176 nsec と 短く,しかも,寿命を延ばすためにパルス幅が 1 nsec 近くまで広がっているので,今となっては国内他施設の方がパ ルス利用実験に適しているのかも知れない(主 R F 空胴の増強により寿命が延びるのでパルス幅を若干,狭くできるが, 100 psec を切るような話にはならない)。今後は,国内他施設に先駆けて,バンチスライシングにより発生させたフェ ムト秒パルスを利用するような新しい展開も必要であろう。

施設スタッフができるだけ広く他の共同利用放射光施設利用を体験しよりよき共同利用のあり方を肌で体験するこ とが望ましい。国内の施設に限らず,国外の施設でも2−3週間の共同利用を2−3年に一度体験できるような方策 を検討することが望ましい。

スタッフが研究できる時間と論文を書く時間の確保は施設の評価を高めるためには必要条件であるので,スタッフ 酷使にならないような配慮が施設強化の必要条件と言える。

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②光源加速器

将来計画としてトップアップ運転の実現を最優先すべきと思う。自由電子レーザー F E Lの短波長化・高出力化のR

&Dを進めつつ,その利用研究も同時に行っていく必要がある。これに関連して,現在,光源グループによって行われ ようとしている極短パルスの発生・高次高調波の発生など,次期光源計画に繋がるR&Dは積極的に進めていただきた い。研究所内のレーザー開発研究者との共同研究を進めるようにすると良い。これらのR&Dの研究成果を踏まえて,世 界に例のない斬新な将来計画を立案していただきたい。急ぐ必要はないが,常に心がけていなければならないのが将 来計画である。4∼5年かけて,光源・利用・レーザー開発の三者で新しい光源について充分に議論を重ね,最終的 にオリジナルな光源案にまで煮詰めるのが良いであろう。大変に大きなテーマなので,他施設との連携も視野に入れ たほうが良い。

既存の加速器 UV S OR -II に関しては,挿入光源の充実が最優先課題と思われる。利用可能な直線部への早期の挿入光 源の導入が強く望まれ,必要な予算措置を取るべきである。トップアップ運転は,平均の蓄積電流を増加することだ けではなく,加速器本体の真空路やビームラインあるいは放射光を照射する試料に対する熱負荷が一定となることか ら,放射光源の趨勢となっているので,近い将来実現すべきである。そのためにもすでにのべたようなシンクロトロ ン電磁石電源の更新が不可欠である。また,必要に応じて24時間運転が行えるような条件整備を行うべきである。

当面,まずは UV S OR -II の性能向上を図ることが最優先である。特にライフタイム向上とトップアップ入射には早期 に取り組んで欲しい。24時間運転については正と負の効果(影響)を総合的に理解して判断することが望ましい。新 光源計画はこれらにめどが立ってから取り組む課題と思われる。

新光源計画については,敷地,人員,他の大規模計画などとの整合性に配慮しつつ,およそ10年後の建設開始を目 標に計画を練っていくのが適当と思われる。現在の敷地,人員の規模でできることは限られており,他の機関との連 携も考慮すべきであると思われる。

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4-4 計算科学研究センター

1977年4月に設置された分子科学研究所・電子計算機センターは,2000年4月より分子科学ばかりでなくバイオサ イエンス分野の計算科学を含めた岡崎国立共同研究機構・計算科学研究センターに改組され,2004年4月からの法人 化にともない自然科学研究機構・岡崎共通研究施設・計算科学研究センターへ改組されて今日に至っている。この間, 一貫して計算科学分野の学術研究発展の先導的な役割はもとより,全国共同利用センターの中心拠点としての役割を なしてきている。外部評価点検項目資料として,

(1)センターの概要 (a) 自然科学研究機構組織図 (b) 沿革および歴代センター長 (c) 構成員

(d) 計算科学研究センター運営委員会

(2)共同利用

(a) 共同利用の運営方針 (b) 機器構成とキュー構成 (c) プログラムリブラリ一覧 (d) システム利用状況 (e) 成果論文数

(f) 分子科学分野への貢献

(g) スーパーコンピュータワークショップ (h) 定例会議

(i)スタッフ主催の研究会

(3)計算分子科学研究系 (a) 計算分子科学研究系の新設

(b) 巨大計算に基づいた分子・物質シミュレーションナショナルセンターの形成

(4)NA R E GI(超高速コンピュータ網形成)ナノサイエンス実証研究プロジェクト

(5)ネットワーク等その他の活動

の5章からなる冊子を作成して,これと過去3年間のセンターレポートを外部評価委員の平尾公彦教授(東京大学工 学系研究科)と樋渡保秋教授(金沢大学大学院自然科学研究科)に事前に送付して,2004年12月24日の朝9時から計 算科学研究センター会議室で各項目の補足と説明を行って外部評価のインタービューを受けると同時にセンターの施 設を見て頂いた。センター側からは,中村宏樹(分子研所長),永瀬 茂(センター長),岡崎進(センター教授),森 田明弘(センター助教授),水谷文保(センター技術職員),矢崎稔子(センター技術支援員)の6名が出席した。

4-5-1 外部評価インタービュー

以下のような意見や課題が提案されて討論が交わされた。

・スパコン,汎用コン更新時には電力キャパシティを考慮に入れることが重要。導入後パンクしないように。

・更新が5∼6年ごととなっているが,5年経つと技術も古くなってくるため新しい更新方法を考えるべき。例えば5 年後の目標を高いところに定め,そこへ向かって2∼3年ごとに部分的に更新をする多段階更新という方法もある。

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・10年ほど前から安価で高性能なコンピュータが普及し,研究室でも大規模な計算が可能になった。それに伴い単に ハード的なサービスだけを行うような大型計算機センターは存続の意義を問われている。計算科学研究センターは研 究を含むソフト面でのサービスをさらに充実し,分子科学のナショナルセンターとしてリーダーシップを取っていく べきである。

・計算科学研究センターは分子科学研究の拠点として必要である。そのため,さらに特徴あるセンターとして発展させ ていくべきである。

・岡崎3研究所では分子科学だけでなくバイオやナノなど様々な分野の研究が行われており,他のセンターにはない特 徴が打ち出せる。また分子科学の研究手法も多様化しているので題材は豊富にあり,様々な大規模計算に利用できる。

・共同利用のサービスも大事だが,国内の計算科学分野研究のリーダーとして魅力ある提言をする。

・ハードだけでなく,ソフト面でもネットワークを構築する。ヒューマンネットワーク,即ち「人が集まる」こと。特 に今後はアジアの研究者へシステムを開放してはどうか。分子研で学んだ人が母国へ帰ってからシステムが利用でき ることが重要。具体的には共同研究を重視し,セキュリティの確保にも配慮すべきである。

・今年度からの大規模計算用のキュー改善は結構なことである。センターではさらに通常の研究室ではできないような 大型計算を目指すべきである。

・重要であるにもかかわらず,大規模な計算を伴う研究が思うように増えてはいない。大型ジョブを使うように地道に 呼びかけることが重要。

・当センターの短中期の明確な目標,方針を打ち出し,魅力あるキャッチフレーズを発信していく。

・コミュニティのサポートを得ることが必要。研究会等でユーザの声を集め,センター利用の研究成果とともにセン ター存続に役立てる。

・計算科学は将来が見えていない楽しみな分野。従来の学問とは異なる価値観や統合性があり,新しいものを生み出す 力がある。しかし,計算科学を教える機関が少ないため分子研が教育プログラムを打ち出し,若い研究者の育成を目 指す。

・集中講義などの教育プログラムは単発では意味がない。継続して定期的に行うことで分子科学の将来について若い研 究者を交えた話し合いの場となる。若い人に夢を与えること重要。

・上記のような新しい事業を展開するために,人員増も含めて組織の充実を図ることが望ましい。

・大学と異なり大学院生という戦力が不足している分子研では人員の確保にも工夫が必要。研究,技術,事務はそれぞ れ責任を持った形で運営することが望ましい。事務系のトップがセンター長を務めることもありえる。

我が国唯一の分子科学計算のための全国共同利用センターとして大きな貢献をなしてきているが,新しい特徴を打 ち出して,分子科学を基盤とする国内の計算科学の裾野を広げて,国際的に先導的な研究の発信拠点としてのさらな る強化と進展が強調された。このためには,共同利用のためのハードウエアとソフトウエアの充実したサービスばか りでなく,計算科学研究のナショナルセンターとしてリーダシップを取っていくことが求められた。また,計算科学 研究分野の若い研究者や大学院生の育成のための教育の重要性が提言された。これらを実行するために,センターの 人材の確保と補強の必要性が指摘された。

4-5-2 外部評価委員の報告

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員A 分子科学研究所は創立以来,わが国における分子科学のレベルを引き上げるとともに,分子科学における世界の最

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先端の研究拠点としての役割を担ってきた。同様に分子科学研究所の計算機センターは最新の計算機を分子科学の研 究者に提供することにより,わが国における計算化学,シミュレーション研究に多大の貢献をしてきた。特に創立後 の10年間は,大学における計算機事情が悪かったせいもあり,当計算機センターの果たした役割は大きい。当時,日 本中の多くの分子科学研究者が分子科学研究所や計算機センターに集った。計算機を利用する目的で分子科学研究所 を訪れた研究者や大学院生は互いに交流を深め,研究面で活発な議論を展開した。こうした交流から共同研究に発展 した例も少なくない。計算機センターは,結果として,競争的な環境で研究者の連携の場を提供してきたといってよ い。同時にわが国の計算化学あるいはシミュレーション科学のレベルを一気に世界的レベルまで引き上げた。計算機 センターのミッションは創立以来30年近く経った現在も変わることがない。世界のトップクラスの研究レベルを維持 するとともに,わが国の分子科学研究者に最新の計算機環境を提供している。

しかし計算機をとりまく状況は創立当初とは大きく変わっている。ネットワーク環境が大幅に改善されたこと,廉 価な計算機が普及することで大学や研究室の計算機能力が大幅に充実したことにより,研究者は分子科学研究所の計 算機センターを訪れることはなくなった。もっぱらネットワークを介して分子科学研究所の計算機を利用するか,あ るいは研究室の自前の計算機を利用するようになってきた。かっては多くの研究者で賑わっていた計算機センターの 2階にある計算機利用者控え室も現在は閑散としている。コンピュータネットワークの発展が逆にヒューマンネット ワークを弱めるという皮肉な結果を招くようになっている。こうした現象は分子科学研究所の計算機センターばかり ではない。全国共同利用の大学の計算機センターでも同じような状況にある。利用者数が激減し,その存立自体が議 論の対象になろうとしている。おそらく大学の計算機センターや国立研究所の計算機センターは早晩,統廃合される であろう。大学の計算機センターは図書館機能を備えた情報基盤センターの色彩を濃くするであろうし,研究所の計 算機センターは分野別のナショナルーセンターとして選別されるであろう。

計算科学研究センターはどうあるべきか? これまでわが国の分子科学の発展に果たしてきた役割を考えるならば, 分子科学におけるナショナルセンターとして一層の発展が望まれている。そのためには分子科学の研究者,学会のこ れまで以上のサポートが何より必要である。同時に計算科学研究センターは利用者の要望に応えるべく努力すべきで ある。最新の計算機パワー,研究室レベルの能力とは1桁あるいは2桁以上高いパワーを備え,長時間 job や超パラレ ル jobを可能にし,計算化学,シミュレーション分野のチャンピオンデータがいつもこの計算機センターから生まれる ような環境を実現せねばならない。ハード面ばかりではなく,ソフト面での充実も一層,重要となる。それがナショ ナルセンターたる所以である。利用者はそれに応え,時間に耐えうる成果を出させねばならない。両者の緊張感ある 連携がナショナルセンターとしての計算科学研究センターの地位を確立することになる。現在の計算科学研究センター は少数の教員と職員の献身的な努力で維持されている。ナショナルセンターを目指すのであれば,計算科学研究セン ターの人的パワーを抜本的に補強する必要がある。

望むべくはかってのように多くの人が出入りする計算科学研究センターにしていただきたい。これは分子科学研究 所の課題でもある。研究所は人がすべてである。傑出した人材を揃え,優れた研究成果で世界のリーダーシップをと ることが必須条件である。それによってはじめて全国の分子科学者や若い大学院生が研究所に魅力を感じ,研究所に 足しげく通うようになる。全国規模のプロジェクトの実施やシンポジウム開催,夏の学校など若手研究者や大学院生 の育成プログラムを実施し,分子科学のセンターとしての役割を果たさねばならない。

現在いろいろな方面で急激な国際化が進んでいる。分子科学研究所はわが国だけでなく,世界の研究者にとっても 魅力ある研究環境を実現するためにさまざまな取り組みを行ってきた。同じことは計算科学研究センターにもいえる。 そろそろ計算機パワーを国外,特にアジア地域の研究者に開放することを考える時期ではないかと思う。実施に移そ

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うとするとセキュリティー問題をはじめ難しい問題があることは承知している。しかしぜひ実現していただきたい。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員B 分子科学研究所は我が国唯一の分子科学に関する研究所である。従って,その社会的および学問的責任は極めて重 い。その意味で分子科学研究所は我が国の分子科学をリードする役目を必然背負っていると言わざるを得ない。その 中で計算科学研究センターをどのような位置づけにすべきか自ずから決まる部分が多い。すなわち,分子科学研究を 支える研究センターとしての役割は極めて大きなものがある。ハードの提供としての計算センターから脱皮し,ハー ドおよびソフトの両面から計算科学研究を発展させる大きなインフラ的な存在となることが避けられないと考える。イ ンフラとは単に“ もの” だけをさすのではない。計算科学研究が学際的であり,かつ計算に必要な種々の技術を必要 とすることが明白であることから,これらをサポートあるいはリードできる人材の確保こそ望まれる。とはいえ,我 が国には計算科学を目的とした他の類似の研究所,大学(研究室)もあることを考えれば,分子科学研究所および計 算科学研究センターの特長を明確にすることなくして明るい将来の展望が得られないとも考える。これらの部分的に は矛盾する観点を全てクリアーすることは難しいかも知れないが,計算科学研究センターとして重要であると考える 幾つかの点について個別的に述べたい。

(1)分子科学は計算科学の発展なくしてありえない

分子科学はあらゆる物質科学の基礎となるものであるが,計算科学は物理,化学,生物学などを横断することが可 能な(唯一の)科学であること,また異なるスケールをも横断して科学する手法としても極めて有用なものである。今 後もこのような計算科学の特長は失われそうもない。このような意味で分子科学研究所に計算科学の研究者が相当数 の規模で必要であると考える。さらに,計算科学研究所に隣接する他の研究所群(バイオ,ナノなど)の協力を前提 に考えれば,計算科学を必要とする考えが更にアップすることは疑いない。このような地理的な特長とそれらの学問 の関連の大きさを最大の武器として国家的な観点にたち,全国規模の計算科学研究(所またはセンター)を発想する ことに賛意を表す。そのために如何なる理論武装しなければならないかが問題であるが… … 。

(2)計算科学は実験科学の側面を有する

計算科学はコンピュータを実験装置とした実験科学でもある。このことは以下のことを意味する。まず,最先端の コンピュータ(実験装置)群が不可欠である。このコンピュータ群には高速演算可能な計算機もあれば,並列計算を 得意とする計算機もあるが,解析を得意とするコンピュータ,動画像を行う端末装置も含まれる。もちろん,ソフト 面の支援も重要である。これらの装置は実験装置と同じく,賞味期限があり,最先端の実験装置としては長くて5年 程度であろう。従って最先端の計算機環境を保持し続けるには相当規模のお金が必要である。計算科学研究センター の重要な役割の一つに,これらの研究環境を維持し,全国共同利用のサービスを一部行うこともあることを忘れては ならない。多くの大学の研究室で大型の計算を行うことは現在でも困難である。さらに高価な計算ソフトをはじめ動 画像装置などを研究室毎に用意することは不効率でもある。最先端の装置を導入・維持し,その使用法に関するコン サルタント的なサービスをも行うことが可能な全国的な機関がどうしても必要である。

(3)計算科学の教育は大学のカリキュラムに少ない

計算科学を専門とする学科は例外を除いて皆無に等しい。計算科学の教育は既存の学科の中のごく一部のカリキュ

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